需要の高まりで世界中で争奪戦が起きている中、長年、HPVワクチンを国として積極的に勧めることなく、貴重なワクチンを廃棄してきた日本に果たして十分供給されるのかという疑問が出ている。 BuzzFeed Japan Medicalは、9価ワクチンの製造販売会社MSDに取材した。
MSD「定期接種に含まれたら、対応・供給するための体制が整っている」
まず、来年4月から定期接種分の9価ワクチンを供給する旨は確約したのだろうか。 これについて、MSDは文書でこう回答した。 「MSDは、現在、定期接種化に向けて準備が進行中の9価ワクチンについて、正式に定期接種に含まれた際に対応・供給するための体制が整っています」 ただ定期接種となるまでは、今あるワクチンを早期にうつことを勧めている。 「したがって9価ワクチンが正式に定期接種化されるまでは、現在定期接種化されているワクチンの対象となる方については、HPV関連疾患の予防のために、引き続き早期のワクチン接種をお勧めいたします」 厚労省予防接種対策推進官の西嶋康浩氏は「なるべく4月1日スタートを目指す」「4月1日からの供給が確約されていると書いてもらって構わない」と4月からの定期接種化を肯定する発言を繰り返している。 それに対応、供給するための体制は整っているということは、少なくとも4月1日からの定期接種分は、9価ワクチンの供給はできると回答したことになる。 また、うちそびれた9学年の女子(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)についても、2025年の3月まで無料でうてる「キャッチアップ(追いつき)接種」が現在行われている。 厚生労働省の予防接種基本方針部会はキャッチアップ接種も9価ワクチンを無料で打てるようにするか、1回目に2価、4価ワクチンをうった人に9価ワクチンをうってもいいかについては継続審議中だ。 このキャッチアップ接種分も9価ワクチンを確保し、供給するという想定なのか、という問いに対して、MSDはこう答えた。 「供給量や供給計画については公開しておりません。今後、厚生労働省とも緊密に連携しながら、安定供給に最大限の努力をしてまいります」 そもそもキャッチアップ接種に9価ワクチンが使われるか決まっていないため、こういう回答しかできなかったものとみられる。
「日本への供給は最優先事項」
世界中で9価ワクチンは争奪戦になっており、これまで積極的勧奨を9年も止めてワクチンを無駄にし続けた日本をなぜそれほど優遇するのか、という批判も専門家からは上がっている。 この批判に対する見解を問うと、「MSDにとっては、HPVワクチンの日本への供給はこれまでと変わらず最優先事項です。できるだけ早く多くの方が接種を完了できるよう、厚生労働省とも緊密に連携しながら、安定供給に最大限の努力をしてまいります」と答えた。 MSDの日本の広報はBuzzFeedの取材に対し、「WHOからも日本のHPVワクチン政策について批判を受け、製薬会社としても忸怩たる思いでいた。他の国を蔑ろにするわけではなく、HPV関連の病気から守るため日本へ安定供給する責務を感じている」と話していた。 9価ワクチンの3回接種から2回接種への変更申請については「承認申請については、開示しておりません」として明かさなかった。