欧州連合(EU)の政策執行機関・欧州委員会は2021年以降、冷凍・乾燥・粉末状のイエロー・ミルワーム、トノサマバッタ、コオロギを食用原料として正式に承認し、EU域内での販売を許可している。今年1月には、部分脱脂粉末状のコオロギと冷凍・乾燥・粉末状のレッサー・ミルワームを新たに追加した。品目ごとに許可される用途は異なるものの、ピザやパスタなどに使われる可能性も想定されている。 しかし、欧州委員会はあくまで販売を許可しただけであり、食品に昆虫を「必ず入れる」と決定した事実はない。拡散した情報は誤りだ。 今回Twitterで拡散したのは、1月28日午前に投稿された以下のツイート。 また、ツイートには、保守系の金融ニュースサイトZero Hedgeの英語記事のリンクも貼られている。 投稿は2月7日午前時点で、5000リツイート、1万いいねされており、116万回以上表示されている。
昆虫食品をめぐる欧州委員会の決定は
他メディアを引用しながら、欧州委員会が1月24日に部分脱脂粉末状のコオロギの販売を許可したことや、それに対する懸念などについて紹介している。 だが、拡散したツイートが記すような、欧州がピザやパスタなどに粉末状のコオロギなどの昆虫を「必ず入れる」と決定した、という趣旨の記述はない。 欧州委員会は2021年以降、複数の昆虫食品を、安全が確認された「新規食品」として承認し、EU域内での販売を許可している。 これまで、欧州委員会が承認した昆虫食品(リンクはそれぞれの欧州委員会実施規則)は以下の通り。
イエロー・ミルワーム(乾燥)/2021年6月22日〜販売許可トノサマバッタコオロギ(冷凍・乾燥・粉末)/2021年12月5日〜販売許可能ヨーロッパイエコオロギ(冷凍・乾燥・粉末)/2022年3月3日〜販売許可イエロー・ミルワーム(冷凍・乾燥・粉末)/2022年3月1日〜販売許可レッサー・ミルワーム(冷凍・乾燥・粉末)/2023年1月26日〜販売許可ヨーロッパイエコオロギ(部分脱脂粉末)/2023年1月24日〜販売許可
各食品の実施規則の内容を確認したが、いずれもEU域内での販売を許可するという内容に留まり、「食品に必ず入れる」などという趣旨の内容はない。 さらに、欧州委員会は同ウェブサイト内で、「どうして私たちは昆虫を食べるべきなのか?」という質問に対して、「昆虫を食べるか食べないかは消費者が決めることだ」と明言している。 こうした点から、欧州がピザやパスタなどに粉末状のコオロギなど昆虫を必ず入れると決定したという事実はなく、拡散したツイートは誤りだ。 なお、各食品の欧州委員会実施規則には、▽許可されている使用用途および各用途に対して使用できる量▽商品ラベルに記載するべき文言、なども定められている。 たとえば、部分脱脂粉末状のヨーロッパイエコオロギは、「雑穀パン」や「ビールのような飲み物」など17項目での使用が許可されている。その上で、パスタ類100グラムあたりには2グラム、ビスケット100グラムあたりには1.5グラムまでなどと使用量の制限が指示されている。 商品ラベルについては、消費者が誤って購入しないよう、商品上に「ヨーロッパイエコオロギの部分脱脂粉末」と記載した上で、成分表の近くにはアレルギー反応を誘発する可能性を知らせる表示を行うことを求めている。 SNSなどで拡散する画像やニュースには、根拠がはっきりしなかったり、誤ったりしている情報も多くある。拡散には注意が必要だ。 ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。 また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。