同日にオンラインで開かれた記者会見で、同グループ代表で署名の呼びかけ人の高田愛子さん(34)は、「上半身裸を強制する健康診断は子どもに一生心に残る傷を与えかねない」と訴えた。 そんな中近年、子どものプライバシーの配慮や性被害防止の観点から、上半身裸での健診を見直してほしいと訴える声が相次いでいる。 同グループは今回、署名と共に要望書を提出。文科省に対して、 ・本人の意思により、Tシャツやブラジャーなどの着用を認める体制の整備 ・正確な診察と児童・生徒のプライバシー保護を両立する方法を考える検討会の開催 を求めた。

健診のトラウマ、今でも…

健診の担当は男性医師。上半身を裸にさせられ、胸を見られたことに深く傷ついた。 高校2年生の時に養護教員に相談したこともあったが、「医師がいやらしい目で見ていると思っているのか」「嫌なら自費で外部で受診しなさい」などと取り合ってもらえず、健診をボイコットしたという。 トラウマは成人後も続いた。「着替えで半裸になったり、半裸のマネキンを見かけたりすると、健診の光景がフラッシュバックする。内科健診という言葉を思い出さない日は20年間、ほぼなかった」 2020年8月に署名を募り始めると、アンケートなどを通して「死ぬほど嫌な思い出」「痴漢にあった時と変わらないくらいに不快」「病院に行けなくなってしまった」などの声が多く寄せられた。 「過剰に反応してるのは自分だけなんじゃないかとずっと感じてきたが、共感の声を沢山もらい、1人封じ込めてきた気持ちが解放された気がした」 高田さんは署名提出後、「(文科省は)子どもたちのプライバシーを守るのは大事だということは理解してくださったと感じる」と話し、安心して受けられる健診の実現に向け、今後も活動を続けていきたいとしている。

上半身裸の健診の見直し、医師はどう見るか

こうした動きを医師はどう見るのか。 BuzzFeed Newsは、医療界にも取材をした。 着衣での健診について、日本小児科医会に見解を尋ねたところ、同医会は「 診察項目のうち、(側湾症を発見するため)脊柱のゆがみを可能な限り鋭敏に検出するには上半身裸が望まれる」と回答した。 側湾症とは、11歳以上の女子に多く見られる病気で、症状が進むと背中や腰の痛みが出て、手術が必要になるケースもある。 佐久総合病院佐久医療センター小児科の坂本昌彦医長も、着衣での健診で側湾症を見逃す懸念を指摘し「背骨が曲がってるかを確かめるためには、肩甲骨の左右差を比べる必要がある。衣服を着ていると厳密には確認しにくく、背中を露出した状態を確認したい」と話す。坂本医師が学校健診をする際は、ブラジャーを外した状態でキャミソールや体操服を着てもらい、側湾症の検査をするときに服をたくしあげて背中を見せてもらうという方法を取ることが多いという。 また、現場の医師の視点から「健診で側湾症を見逃したことで医師が訴えられたケースもある。そうしたリスクを避けなければという思いもある」と指摘。 その上で、「裸を見られたくないという子どもの気持ちは大事にしないといけない。なぜ服を脱いでもらう必要があるのかを納得感のある形で伝える必要がある」とし、医療者や学校が説明責任を果たしていく必要があると話した。 また、被服部を直接見ることには、アトピーや虐待の痕を見つける目的もある。小児科医・新生児科医の今西洋介医師によると、「健診で稀にタバコの痕やアザが見つかることもある」という。 上半身裸の健診への不安が高まっている背景には、健診中の医師による性暴力事件が相次いでいることもある。2021年5月には、岡山市の医師が健診中にペン型カメラを胸ポケットに入れて女性生徒らを盗撮する事件が発生し、被告は2022年10月に有罪となっている。 こうした課題について、子どもへの性暴力にも詳しい今西医師は、「医療者も性暴力防止の認識をより高めないといけない」とし、女子への診察はできるだけ女性医師が行うことや、密室で医師と生徒が2人にならないなど、性暴力防止の体制作りも引き続き強化していかなければならないと指摘している。

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